11代大西清右衛門(浄寿)造『箆被釜(のかづきがま)』共箱 千家十職

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浄寿らしい荒々しい肌で箆被形に仕上げた瀟洒な作品です。風炉や釣釜にお使いになれます。鐶付は鬼面、蓋は唐銅の時代蓋が添えられております。釜肌はとても味わい深く育っております。箱は共箱で蓋表に『ノカツキ釜 釜師清右衛門』として印が捺してあります。また蓋裏に『天保十四癸卯年季春鋳之 道敬(花押)』と署名してあります。天保14癸卯年とは1843年、道敬とは浄寿の名です。すなわち浄寿35歳頃の作品ということが判ります。この様に制作年代が判る作品は非常に珍しいです。
箆被釜(のかづきがま)とはの湯釜の形状のひとつで、釜の胴の下部と底部との境目、すなわち毛切のあたりが飛び出し、下が引っ込んだ形の釜です。箆被とは、弓矢で鏃(やじり)が矢の竹に接するところをいい、釜の胴から底にかけての形が箆被に似ているところからこの名があるといいます。松屋会記に『ノカツギ』という名称が古釜として紹介されていることより、芦屋や天明といった桃山以前から用いられた形です。

箱裏側の桟を修復した形跡があります。*写真10をご参照ください。

釜自体は良い状態で水漏れ等ございませんので、すぐにお使いになれます。

共箱。時代唐銅蓋。

胴径20.5㎝ 口径(内径)10.2㎝ 高さ18.7㎝(蓋含まず)


▢大西浄寿(おおにしじょうじゅ)
文化5年(1808)~明治8年(1875)
釜師。通称清右衛門。名乗道敬。京都森家から養子に入った浄寿の性格は豪放磊落で、華美を好んだと言われています。前半の華麗な良い時代に比べ、後半は幕末、明治という時代の波にもまれ、茶道は衰退しました。その作風は豪放華麗でしかも趣深いものが多く、大胆で美しく、且つ大肌・中肌の美しい地肌の中に荒れなどもおもしろく配されています。釜の仕上げにも創意工夫を凝らし、様々な改良を加え、近世での大西家の伝統作風の上に独自の作風を打ち立てました。

【参考文献】
落款花押大辞典 淡交社
茶の湯の釜 淡交社
千家十職 世界文化社

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